本日の三条市議会での大綱質疑が想定していたよりも早く終わり、少し時間ができたので、三条市を取り巻く最も喫緊の課題と言っても過言ではない県央基幹病院についての私の考えを少し書き綴ってみたいと思います。
この県央基幹病院については、
県のホームページからも明らかなとおり、平成21年から検討に着手し、様々な検討過程を経て、平成28年に、@平成35年度(令和5年度)早期の開院、A病床数450床、等を内容とする“県央基幹病院整備基本計画”が策定されました。
私たちはこの基本計画に基づき、粛々淡々と整備が進んでいくものと期待をしていたのですが、今年に入って突然、この県央基幹病院整備基本計画の見直しが打ち出されたのであります。
本来であれば、この突如として発生した事態に関し、言いたいことは山ほどあるのですが(もちろん私たちの“言いたいこと”にはそれぞれ対外的に説明できる客観的事実を持ち合わせております)、ここではそれをグッと抑え、@県央基幹病院を含む医療の問題は財政とは切り離して議論されるべき、A県央基幹病院に関する議論が始まったときとの同病院を巡る環境変化に着目して再検討を行うべき、との花角知事の基本姿勢を前提として、私たちの地域を巡る環境が当時と比較してどのように変化しているのか?を中心に事実関係を列挙してみたいと思います。
と、その前に…
まずは“病院は誰の(ためにある)ものか?”の私どもの立場をハッキリしたいと思います。
何故ならば、環境変化と一言で申し上げても、それは見る人の立場、立ち位置によって、大きく見える風景(環境変化)に違いが出てくるからです。
そこで、私どもの立場でありますが、私たちは(これは誰一人として異論を差し挟む人がいないことを信じて止みませんが…)、病院は徹頭徹尾“患者”さんのためのものであると考えております(より広義に解釈することを許されるのであれば、それは将来“患者”になる可能性を持ち合わせている地域住民のためのものであるということになるでしょう)。
これは、市役所が市民のためにあるのであって、私たち行政職員のためにあるのではないということと、全く同じロジックであります。
ですので、“環境変化”は(県当局がしばしば口にする医療関係者等供給サイドから見たものではなく)患者から見たものを最優先に論じられなければなりません。
その上で、事実関係を皆さんとともに見ていきましょう。
まずは、2次医療圏の圏域外救急搬送件数と圏域外搬送率の“環境変化”から。
2次医療圏とは“一体の区域として病院等における入院に係る医療を提供することが相当である単位”として設定されているため、特殊な医療が必要である場合を除き、当該2次医療圏の中で医療サービスは完結しなければなりません。分かりやすく言えば、自分たちが生活している2次医療圏とは別の2次医療圏(圏域外)に救急車等で運ばれるようなことがあってはなりません。
そこをご理解いただいた上で、上の表を確認してみましょう。
基本計画原案の検討が始まった平成21年でさえ、私たちの県央2次医療圏は、県平均と比較しても突出して圏域外搬送率が高い状況にありました(この県平均と著しく乖離したデータこそが県央基幹病院整備のトリガーになったと言っても過言ではありません)。
それがどのように環境変化が生じたのでしょう。
直近の平成30年をご覧ください。私ども県央2次医療圏の圏域外搬送率は当時の18.5%から25.8%へと7.3%ポイントと飛躍的に悪化しております(同じ期間全く変化が見られない県平均とは裏腹に!しかも、県平均5.5%と私たちの県央2次医療圏とは天と地ほどの違いがあります!)。
これは、その分、県央2次医療圏において、救急医療を受け止める体制が脆弱化していることを示しており、“患者”目線で見た場合、より充実した救急医療体制を必要とする切迫度が更に高まったことが明らかになったことこそあれ、その逆はないということは断言できると思います(これだけ見れば、基本計画原案どおりでも大丈夫なのか⁉という新たな議論提起がなされてもおかしくないほどの状況です)。
こちらのグラフは救急搬送時間の推移を表したもの。
県央2次医療圏に位置する救急搬送の担い手である消防本部のうち、燕・弥彦総合事務組合消防本部、加茂地域消防本部は、議論開始当時から既に、県平均よりも搬送時間が10分ほど高い状態にありました(このデータも当時、県央基幹病院整備の必要性を補完する大切な資料でありました)。
それがどのように環境変化が生じたのでしょう。
直近の平成30年をご覧ください。両消防本部管内においては、県平均と10分の乖離だったものが13分の乖離へと悪化しているではありませんか!
三条市消防本部においても然りです。
しかも県全体のトレンドが救急搬送時間の伸び(悪化)に一定の収斂が見られるのに対し、私たちの地域は一向に収束する気配がありません。
最後はこのデータ。心疾患の標準化死亡比の変化です。
必ずしも、救急搬送との因果関係は明らかではないものの、このデータを含め、これまでお示ししたデータを見ると、思わず(多分に感情的に)、“よもや県当局は県民の命の重さについて、住む地域による軽重を許容しようとしているのか?”と口に出しそうになってしまいます。
最後に少しだけ、供給サイドについて触れてみたいと思います。
地域医療の持続可能性を鑑みた場合、“(将来にわたって持続的に生み出される)医療従事者が働きたい”と思われる環境を整えることが肝要だとされております。それはしばしば“マグネットホスピタル”という専門用語を用いて論じられるのですが、このマグネットホスピタルを改めて紐解いてみると、@医師、看護師や患者さんを磁石のようにひきつける魅力的な病院であって、A一般的には、一定の病床数を上回るとその魅力が飛躍的に高まる、との認識で相違ないようで、なおかつ、このマグネットホスピタル論に基づき、県央地域の医療関係者と意見交換を積み重ねていくと、この県央地域においては“病床数450床相当規模以上”がその閾値であるという点についてもほぼ意見の一致を見ているようです。
少し長々と書きました。
事実関係に戻ったとしても、私たちの願い、即ち“基本計画どおりに県央基幹病院を整備していただきたい”という願いは、過大な要求でもなく、無理筋でもなく、むしろ“当初計画よりも状況は悪化しているにも関わらず、(供給サイドの事情等を考慮した場合)原案通りでやむなく受け入れる”という控えめな主張であることをご理解いただけるのでないかと考えます。
また、昨今、県央地域に位置する(これまで議論されて来なかった)他の病院のあれやこれやに言及する筋もあるやに伺っておりますが、今ほど提示した事実関係からご理解いただけるように、(他の要素を新たに加えることなく)まずは県央基幹病院を基本計画どおりに進めていくということが肝要であります。
新たな要素を持ち込むことで、これ以上、問題を複雑化、長期化させることのないよう、県当局の自重を強く促したいと考えております。
最後に…
花角知事が公言されている“(医療関係者の話を聞いた上で)市町村長からの話も聞く”機会は未だ設けられておりませんが、同じく知事が公言されている再検討の〆が年内であることを鑑みると、今月中にはそうした機会が設けられると考えておりますし、私は、今日書き綴った主張を知事にも直接申し上げてまいりたいと考えております。
聡明な知事ですから、患者目線から見た環境変化に基づく(かなり常識的かと思われる)私たちの主張をしっかりと受け止めていただき、合理的で冷静な判断をしていただけるものと期待しております。
そうそうっ!
明日も市議会の一般質問で通告されているようですので、この内容を軸に真摯にお答えをしてまいりたいと考えております。
何卒宜しくお願い申し上げます。
posted by 国定勇人 at 13:13| 新潟 ☔|
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