昨日、見附市役所さんで行われた“見附市・三条市・全国健康保険協会(協会けんぽ)新潟支部との事業連携に関する基本協定”の調印式に臨みました(関連記事はこちら)。
この協定、一見地味なものなんですが、実に画期的なんです(個人的には、“実に革命的”と言っても過言ではないと思っているほどなんです)。
では、どこが画期的なのか…
それにはまず、私たちが取り組んでいる“スマートウェルネスシティ構想”なるものの基本姿勢について詳らかにしなければなりません。
長寿社会が進展する中、個人レベルにおける健康寿命を延ばすと同時に、社会レベルにおける医療費や介護サービス費の増加を抑制することが喫緊の課題となっております。
他方、従来型の健康施策においては、我々はとかく“健康施策については、○○に一生懸命取り組んでいます”“それによって多くの笑顔が溢れ、徐々に成果も表れ始めております”とだけ言い募り、つまりは極めて主観的な情報発信に留まり、その結果、どのように上記課題を解決し、或いは改善するに至ったのかについての客観的評価から目を背ける傾向にありました。
そこで、“スマートウェルネスシティ構想”においては、こうした漠然とした曖昧模糊とした旧来型の取組から訣別し、社会全体の“健康度”に関する様々な客観的な指標(例えば、医療費総額、特定健康診査のマクロ的傾向など)を設けた上で、各種“スマートウェルネスシティ構想”に基づく諸施策が、これら客観指標にどのようにインパクトを与えるうるのかを、それこそ客観的に評価していこうというアプローチを導入することといたしました。
でも、この実現のためには、容易ならぬ高い壁が立ち塞がっておりました。
当然のことながら、この基本的姿勢を貫徹するためには、客観的な指標を支えるデータが必要となります。
政策導入前と導入後における医療費の変化があったのか(なかったのか)、特定健康診査の診査項目の中で顕著な変化が見られたのか(見られなかったのか)…といったことですね。
でも、こうした当たり前のデータを私たちは当たり前のように手に入れることができなかったのが現実なんです。つまり、従来型の健康施策については、客観的に評価しようと思っても評価の仕様がなかったのでありました。
何故か…
例えば、医療費をマクロ的にデータ解析しようとする場合、医療保険者ごとに存在する高い壁が障壁となりました。
私たち市町村は、国民健康保険の保険者でありますが、国民健康保険の加入者は三条市民の約24%にしか過ぎません。
他の保険者(例えば協会けんぽ)のデータは、いわゆる“個人情報保護”が邪魔をしてしまい、我々が勝手にみることができないのです。
厳密に言えば、本当は、マクロデータ、例えば、三条小学校区住民全体における傾向の分析のみに関心があるので、匿名化してそれぞれの保険者内で名寄せさえしてしまえば、“個人情報保護”とは実は無縁の世界なんですが、過度な“個人情報保護”がそれさえも難しくさせてしまっていたのであります。
そんな漠然とした“何となく個人情報保護に抵触するのではないか”といったイメージばかりが先行してしまい、保険者を超越したマクロ解析を行うことが儘ならず、これまで、客観的な解析が不可能だったのです。
そんな無力感さえ漂う事態を打開すべく、腰を上げていただいたのが、協会けんぽ新潟支部さんでした。
医療費、特定健康審査結果といった項目を、保険者(国民健康保険を運営している市町村と独自の医療保険を運営している協会けんぽ)を超えて、分析できるのは、今回の我々が全国で初めてのケースだと思います。
私たちは、これにより、三条市民の約7割の方々を対象としたマクロ解析が可能となりました。
評価の精度は飛躍的に高まります。
これから、私たちの仲間が、つまり“スマートウェルネスシティ構想”を推進している市町村の仲間が続々と追随してくれます。
この“蟻の一穴”は大きいですぞっ!
筑波大学の久野教授、協会けんぽ新潟支部長さん、平成9年入省同期のY君を始め、多くの方々の旺盛なチャレンジ精神に、心から感謝を申し上げたいと思います。