昨今、減反政策の見直しがマスコミに大々的に取り上げられております。
このマスコミの報道を通じてもお察しのとおり、我が国の農業政策の太宗は、国政レベルで決定され、実行されていきます。
でも…
だからといって、市町村レベルで、農業分野におけるオリジナリティを全く発揮できないのかというと、“どうもそうでもなさそうだ”というのが、今の私たちの考えです。
減反政策のようなマクロ的視野からの施策展開はできないけれども、もっと身近で、小回りの利く、自分たちの目の届く範囲で自由に絵の描くことのできる、ミクロ的視点ならではの施策展開ができるはず。
そして、そうしたミクロ的視点ならではの施策展開を積み重ねることで、結果としてはマクロ規模に影響を及ぼし、結果、国政レベル全体の農業政策を転回させる、そんな“愚公移山”的アプローチならできるはず。
そう思いながら、市町村レベルだからこそできる農業分野の施策展開に取り組んでおります。
それでも…
具体的な施策展開については、改めて紹介していきたいと思いますが、これらの施策を講ずるとき、それでもなお、一抹の不安がよぎるのを払拭することができません。
何故ならば、農業分野における我々のアプローチには、あまり前例がなく、しかも、自分自身が農家出身ではないという負い目がある手前、前例のない、道なき道を歩むのに足るだけの自信を必ずしも持ちきれないからです。
そんな残り1%くらいの部分で逡巡、躊躇しがちな私に、“あなたの考えていることは決して間違っていないよ”と、そっと肩を押してくれたのが、久松達央氏の著書“キレイゴトぬきの農業論”。
この本の最大の特徴は、農家出身でない大半の日本人にとっても、“共通言語”を以って、農業分野を覗くことができること。
農業分野というのは、とかく専門的で、農業分野以外との間に高い壁が存在するイメージを必要以上に与えがちな分野(イメージのみならず、実際にも多分にその傾向が強いのですが…)で、門外漢が非常に手を出しづらい分野なのですが、その最大のものは、多くの農業関係者が“それは、自分たち農家でないと分からないことなんだ”という一言で片付けてしまうこと。
たった一言のこの言葉で、門外漢の多くは、9割9分の人々は、恐れをなして、それ以上、農業分野に関心を持つことを諦めてしまうと、私は常日頃から思っていたのですが、本書は、それを農業者サイドから取り除いてくれています。
しかも、門外漢が、それぞれのキャリアを積み重ねた中で、当然の如く、農業分野に対して感じる様々な疑問を、門外漢の中では通用する“共通言語”で以って解説してくれるのです。
敢えて挑戦的に、誤解を恐れずに申し上げれば、“合理的に”農業を解きほぐしてくれているのです。
まさに“農業論”。
また、この本で語られる全ての事象が、自らの経験から帰納的に展開していくカタチで、つまり、ミクロ的視点からのアプローチで語られているということも、我々市町村レベルに身を置く者にとっては、この本を魅力的なものにしています。
農業に関係している方にとっても、そうでない方にとっても、少なくとも、市町村レベルで仕事をしている方々には、是非とも読んでいただきたい一冊です。
とにかく、おススメですっ!!!